帰り道

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  「帰り道」

 夜の帰り道
 線路脇で星空を見上げるのが癖になった
 東京の空は明るくて
 星はいくらも数えられない
 遠いふるさとの空には数えきれない星がある
 電車が通過する音を聴きながら
 そんなことを思う

〈地の光は絶え
 築けしものも流れた
 多くの魂が去り
 幾万の涙が流れた〉

 月のない夜
 春が去っていく夜
 かすかな星明かりをさがして
 失われたものを思う

 それでも風は吹き
 波は打ち寄せ
 木々は芽吹いて青々と茂る
 それでも星は輝き
 夜明けはやってくる
 それでも人々は生き
 涙は笑顔に変わる

 朝になれば線路脇では
 ヒバリがさえずるし
 ハナミズキが咲きかけている
 紫陽花さえもうじき咲きそうだ

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