横浜ホッチポッチ・ミュージックフェスティバル(YouTube)

2012年10月21日、横浜で開催されたホッチポッチ・ミュージックフェスティバルに現代朗読協会が参加してきました。
20分くらいのパフォーマンスを横浜地方裁判所前の特設会場で披露しました。
そのときの記録映像です。

演目は「いちめんの菜の花」「こどもがせっせと歩く」「こころよ」「猫」「草枕」「枕の草紙」「祈る人」と連続しています。
朗読は野々宮卯妙、福豆豆子、佐藤ピリカ、山田みぞれ、唐ひづる、まぁや、てんトコロ、片岡まゆみ。
ダンスがキム・ウィシン。
演奏は水城ゆう。

なお水城ゆうオリジナル作品「祈る人」はこちらで原文が読めます。

おそうじブームな少女の貢献、いただきました

木曜朝ゼミ、このところイベント続きなので今日はその練習などが中心でした。
水城さんが名古屋で公演があって不在のせいか、ほとんど女子会のノリですw

Fさんが、学校がお休みのお嬢さんを連れて来てくれました。
みんながきゃあきゃあ女子会ノリで朗読練習?している間に…

おそうじブームな少女の貢献、いただきました

木曜朝ゼミ、このところイベント続きなので今日はその練習などが中心でした。
水城さんが名古屋で公演があって不在のせいか、ほとんど女子会のノリですw

Fさんが、学校がお休みのお嬢さんを連れて来てくれました。
みんながきゃあきゃあ女子会ノリで朗読練習?している間に…

水城さん不在の木曜夜ゼミ

野々宮です。
水城さんが福井で演奏会のため不在の間、
ゼミ生は寂しく(?)ゼミ生だけでゼミをやってます。
つまり、やりたい放題だぜー、なんですが、
けっこう真面目にやっております。
まずは皆で呼吸法をやって、肩や背中の強張りをほぐし、
気持ちを落ち着けます。

佐…

朗読者

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Authorized by the author

  「朗読者」
                            作・水城ゆう

 つづける。つづける。読みつづける。彼は読みつづける。彼は読みつづける。
 彼は読みつづける。老人に向かって。若者に向かって。少女に向かって。会社員に向かって。学生に向かって。浪人生に向かって。美大生に向かって。音楽家に向かって。小説家に向かって。プログラマーに向かって。デザイナーに向かって。クラリネット奏者に向かって。陶芸家に向かって。パティシエに向かって。女に向かって。あなたに向かって。
 彼は読みつづける。学校の校庭で。ギャラリーで。飲み屋の一角で。ホールで。講堂で。集会所で。アトリエで。往来で。商店街で。森のなかで。海辺で。多くの人々の前で。少しの人の前で。被災地で。戦火のなかで。あそこで。ここで。
 彼は読みつづける。日にあたりながら。ライトに照らされながら。雑踏に声をかき消されながら。子どもにからかわれながら。着信音にさえぎられながら。オルガンを聴きながら。エンヤに包まれながら。居眠りする老人を気にしながら。あなたを見ながら。
 来る日も来る日も彼は読みつづける。
 あなたは彼が読みつづけていることで世界がありつづけることを知る。彼が読みやめるときが来ることなどあなたは想像することができない。世界がありつづけるかぎり彼は読みつづけるだろう。彼が読みやめるその瞬間をあなたは知ることはない。
 しかしそのときはたしかに来る。
 彼は読みつづける。それが過去形になるときがたしかにある。しかしいま、彼は読みつづける。あなたに向かって。

三鷹Sonidoでのライブ映像、一挙放出

2012年10月3日夜、三鷹〈Sonido〉で初の音楽と朗読のライブを、ドラムスの今竹一友さんを迎えておこないました。
その模様をほぼ全編、YouTubeで公開しました。

最初の演目は、水城ゆう作「じぃは今日も山に行く」。
朗読は野々宮卯妙、ピアノ演奏は水城ゆう。

ファーストステージ2番目の演目は、水城ゆう作「また君は恋に堕落している」。
ここでドラムスの今竹一友さんがはいりました。朗読は野々宮卯妙、ピアノ演奏は水城ゆう。

ファーストステージ3番目の演目は、太宰治作「彼は昔の彼ならず」。
朗読は照井数男。ドラムスの今竹一友さんとのデュオではじまり、途中からピアノで水城が参加します。

ファーストステージ4番目の演目は、夢野久作作「きのこ会議」。
朗読は山田みぞれ。ドラムス・今竹一友、ピアノ演奏・水城ゆうです。

ファーストステージ5番目の演目は、水城ゆう作「とぼとぼと」。
朗読は佐藤ピリカ。ドラムス・今竹一友、ピアノ演奏・水城ゆうです。

ファーストステージのラストは、夏目漱石作「夢十夜・第十夜」。
朗読は照井数男、佐藤ピリカ、山田みぞれ、野々宮卯妙。ドラムス・今竹一友、ピアノ演奏・水城ゆうです。

セカンドステージの最初は、太宰治作「悶々日記」と「貨幣」を構成した作品「悶々貨幣」。
朗読は佐藤ピリカ、野々宮卯妙、山田みぞれ。ドラムス・今竹一友、ピアノ演奏・水城ゆうです。

セカンドステージの2番目は、水城ゆう作「ゼータ関数の非自明なゼロ点はすべて一直線上にある」。
朗読は佐藤ピリカと野々宮卯妙。ドラムス・今竹一友、ピアノ演奏・水城ゆうです。

セカンドステージの3番目は、水城ゆう(piano)と今竹一友(drums)によるデュオセッションです。
完全な即興で、タイトルも決まってません。
だれか素敵なタイトルをつけてください。

セカンドステージの4番目は、太宰治作「葉」。
朗読は照井数男。ドラムス・今竹一友、ピアノ演奏・水城ゆうです。

セカンドステージの5番目は、水城ゆう作「たとえおまえが僕の敵だとしても」。
朗読は野々宮卯妙。ドラムス・今竹一友、ピアノ演奏・水城ゆうです。

ラストは、水城ゆう作「祈る人」。
朗読は照井数男、野々宮卯妙、佐藤ピリカ、山田みぞれ。ドラムス・今竹一友、ピアノ演奏・水城ゆうです。
以上、演奏も朗読もすべて即興です(テキストは決まっていますが)。

水城ゆうの音楽塾

今日から水城ゆうの音楽塾、やってます。
基本はゼミ生対象ですが、興味のある方はお問い合わせください。
音楽とはなにか、どんな構造か。
今日は音楽史から、その発展のしかたから音楽を見てみました。
音楽を構造的に理解することで、音楽を作り出す人になろう!
…という…

共感的コミュニケーションを学ぶ

野々宮です。
ただいま、銀座で2級ボイスセラピスト講座を開催しています。
前半の呼吸法や発声、音読エチュードについては
私が講義させていただきました。
その後水城オーガナイザーにバトンタッチし、
いまは音読療法の手法の中でもとても大事な、共感的コミュニケーショ…

共感的コミュニケーションを学ぶ

野々宮です。
ただいま、銀座で2級ボイスセラピスト講座を開催しています。
前半の呼吸法や発声、音読エチュードについては
私が講義させていただきました。
その後水城オーガナイザーにバトンタッチし、
いまは音読療法の手法の中でもとても大事な、共感的コミュニケーショ…

盛況!土曜昼ゼミ~10月24日は北浦和へ

今日の昼ゼミはいつもより大勢の参加者で盛況でした。
写真は、
来月のお茶会朗読@北浦和でお披露目する予定の、
玻瑠あつこ&てんトコロによる「袈裟と盛遠」(芥川龍之介)を
皆で聞いているところ。

こんなに面白い「袈裟と盛遠」は他にないでしょう!
うーん、すごいです…

臨時月曜昼ゼミでコアマッスル鍛錬に挑む

新人ゼミ生、佐藤くん。
細身でコアマッスルが弱いというので、
朗読しながら上体を(なるべく)倒さず下ろすスクワットをやる、
というまるで鬼コーチかブートキャンプなエチュード?を命ぜられました。
iPhoneを見ながら泉鏡花「夜行巡査」を読んでます。
キツイです。
見て…

臨時月曜昼ゼミでコアマッスル鍛錬に挑む

新人ゼミ生、佐藤くん。
細身でコアマッスルが弱いというので、
朗読しながら上体を(なるべく)倒さず下ろすスクワットをやる、
というまるで鬼コーチかブートキャンプなエチュード?を命ぜられました。
iPhoneを見ながら泉鏡花「夜行巡査」を読んでます。
キツイです。
見て…

お茶の練習

10月24日、北浦和でお茶会+朗読会という企画をやることになりました。
椅子席なので気楽にお出しすればいいのですが、
一応お作法を知っておこうということで、
若いながら茶道歴20年のベテラン、まなさんに朝ゼミを利用して、
お菓子やお茶をお出しする練習をしているとこ…

梅丘テイクファイブ・ライブ(13)彼は眠らない

現代朗読協会が初めて梅丘のライブバー〈テイクファイブ〉で朗読ライブをおこないました。
ライブ最後となる13番めの演目は、水城ゆう作「彼は眠らない」。
出演者全員での朗読です。

原作はこちらで読めます。

11月には梅丘音楽祭が開催されます。
げろきょはそれにも出演予定です。
また、その前の10月には横浜のホッチポッチ・ミュージックフェスティバルへも招聘されています。
12月末には明大前の〈キッド・アイラック・ホール〉で公演もあります。
みなさん、直接現代朗読をご覧になってください。
映像で見るのとはまったく違ったものが伝わることと思います。

ギターを弾く少年

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  「ギターを弾く少年」
                            作・水城ゆう

  ギター演奏から。
  ゆったりと静かだが、メジャーキーの曲想で。
  しばらくギター演奏。のあと、朗読が演奏にかぶさってはいる。

 風が吹いていました。
 もう夕方に近くなっていましたが、まだ日がさしていました。
 まだ春は来ていなかったけれど、今日は暖かい一日だったのです。
 やわらかな風が木々を歌わせていました。おだやかなリズムと暖かなハーモニーをかなでていました。森が音楽をかなでていたのです。
 その森のなかから、男の子はやってきました。

  ギター演奏がゆっくりと終わる。
  演奏が終わるのを待ってから。

 男の子はストラップを肩から斜めにかけて、ギターを背負っていました。身体の割にいかにもギターは大きく見えましたが、よく見るとギターは普通の大人用のものよりひとまわり小さいのです。それでも男の子には大きすぎるほどでした。
 ほかには男の子はつばのある帽子を目深にかぶっていて、そのせいでどんな表情なのかよく見えませんでした。そして大きな革靴を履いていました。革靴は靴ひもが締まっていましたが、長すぎるせいで蝶結びの部分は大きくなって地面に少しこすれていました。
 着ているものは質素なズボンとセーターだけ。セーターは首と肘のところにほころびがありました。
 森のなかから出てきた男の子は、森のはずれに切り株を見つけると、そちらに近づいていきました。その様子をさっきからずっと、ひとりのおじいさんが見ていました。おじいさんは天気がいいと、毎日この森のはずれの広っぱにやってきて、小川のへりにある古い柳の切り株に腰をおろしてひなたぼっこをするのが習慣なのです。
 少年が切り株を吟味し、身体をかがめてフッとほこりを吹きはらってから、そこに座るようすを、おじいさんは全部見ていました。少年はおじいさんに気がついているのかいないのか、こちらには目を向けません。でも、そう遠くはないのです。小川のへりに何本かはえているクルミの木を二本ばかり渡せば届きそうな距離なのです。
 少年は切り株に座ると、背負っていたギターをぐるっと身体の前に回し、抱えました。そしてしずかにギターを弾きはじめました。

  静かなアルペジオだけの演奏、しばらく。
  その演奏にかぶせて。

 少年の指には大きすぎるように見えるギターから、静かな音が聴こえてきました。その音は風が歌わせている森のざわめきに溶けこみ、ひとつの曲をかなでているみたいでした。
 森のなかからは鳥のさえずりも聴こえてきました。鳥はまるで森と少年のギターの伴奏にあわせてメロディを歌っているみたいでした。
 別の種類の鳥もさえずりはじめました。メロディが重なり、ハーモニーのように聴こえます。おじいさんは思わず耳をそばだたせました。
 そういえば、しばらく音楽を聴いていなかったことを思い出しました。しばらくどころか、この以前にいつ音楽を聴いたのか、思い出せないほどです。若いころはあんなに夢中になっていろいろな音楽を聴いていたというのに。しかしこのごろは森の音や鳥のさえずり、小川のせせらぎがあるので、音楽を聴く必要がなくなっていたのです。

  アルペジオの演奏、続く。
  コードとアルペジオパターンはゆっくりと変化していく。
  しばらくの間を置いて。
  朗読が始まったら徐々にギターは抜けていく。

 いつのまにか、ひろっぱに女の子の手を引いたお母さんらしき人と、おばあちゃんらしき人がやってきていました。街のほうから来たようです。おじいさんも見覚えのある人たちでした。時々おかあさんと女の子、あるいはおばあちゃんと女の子、そしてたいていは三人でこの広っぱに来て、しばらく遊んで帰るのです。
 三人はすぐに男の子に気づき、しばらく見ていましたが、女の子がお母さんの手を振りほどいて男の子のほうに駆けていきました。お母さんは「待って」と口を開きかけましたが、間に合いませんでした。そこでお母さんも女の子を追って少年に近づいていきました。
 女の子が男の子の前に立つと、男の子は演奏をやめました。そして女の子を見ました。ふたりは同じくらいの年に見えました。女の子のほうが少し小さいかもしれません。
 追いついてきたお母さんが少年を見下ろすと、いいました。
「こんにちは。ギター、上手なのね」
 少年はお母さんのほうを見上げましたが、なにもいいません。挨拶もしません。
 お母さんはちょっと困った顔になりましたが、またいいました。
「どこから来たの? あなた、ひとり? お母さんかお父さんはいないの?」
 男の子はなにも答えません。
 おばあちゃんが横からいいました。
「ぼく、お話はできる?」
 なにもいいません。お母さんがいいました。
「どこか悪いのかしら。見たところ病気でもなさそうだし。迷子かしら」
「警察に届けたほうがいいかねえ」

  ギター、コードストロークでリズミカルに入る。
  マイナーキーのコード進行。
  徐々に激しく。
  ギターにかぶせて。

 急に風が強まってきました。
 冷たい風が森をざわつかせながらやってきて、広っぱのみんなに吹きつけてきました。鳥のさえずりはいつのまにか聴こえなくなっていきました。
 みんなは思わず首をすくめて、襟をかきあわせました。
 そのとき、女の子が男の子にいいました。
「寒くない?」

  ギターのコードストロークが、にわかに静かになり、コード進行も変化する。

「あたしの上着、貸したげようか」
 男の子は首を横に振りました。それを見て、みんなは初めて、男の子が話を聞いて理解していたことがわかりました。
 それまでこちらでだまって見ていたおじいさんがゆっくりと立ちあがると、みんなのところへ歩いていきました。

  ギター演奏、とまる。

 おじいさんに気づいた三人が振り返りました。おじいさんは三人に黙ってうなずくと、少年の前に立ち、いいました。
「この風は天気が変わる前兆だ。日が暮れるし、これから急に冷えてくるよ。もうお家にお帰り」
 それを聞いたお母さんがいいました。
「この子のこと、知っておられるんですか?」
「いや、知らない子だ」
「どこに住んでるのかしら」
「わからない。しかし、帰るところはあるんだろう。私たちが詮索する必要はないだろうさ」

  ギター演奏。今度は曲。できればメロディをともなった曲。
  すぐに朗読はいる。

「お腹、すいてない?」
 女の子がききました。男の子が答える前に、女の子は背中にせおっていた小さな鞄をおろすと、中からリンゴをひとつ取りました。
「これ、あげる」
 リンゴが少年に手渡されました。
「ありがとう」
 少年がそういうのを聞いて、みんなちょっとびっくりしました。
 少年は立ちあがり、リンゴをズポンのポケットに入れると、ギターをぐるっと背中のほうに回しました。
 少年はやってきたときとおなじように、また森のなかへと帰っていきました。ズボンのポケットが大きくふくらんでいるのが、みんなにも見えました。
 風がすこしおさまり、森のざわめきのなかにまた鳥の声がもどってきていました。
「また会える?」
 女の子がそうたずねましたが、男の子の答える声は聞き取れないまま、森の中へと消えていきました。
「きっとまた会えるさ」
 おじいさんがそういうと、女の子はおじいさんを見上げ、ニコッと笑ってから、お母さんとおばあちゃんの手を求めてつなぎました。