扇田拓也氏との合同ワークショップ、終了
昨日はカトリック下北沢教会のアトリエかまぼこ(元米軍かまぼこ兵舎)で、演劇と朗読のワークショップ「物語と自我」を、扇田拓也くんと合同で開催した。
初めての試みだ。
扇田くんは先日、てがみ座「空のハモニカ」の演出で多くの観客を魅了し喝采をあびたばかりの、新進気鋭の舞台演出家であり、みずからも役者として舞台やテレビに出演することもある人だ。
とても緻密で繊細なステージを作る人で、私の現代朗読の演出とは対極にあるといっていい。
まったくちがう手法と感性を持つふたりだが、何年か前から交流があり、今回、ぜひいっしょにワークショップをやってみよう、ということになったのだ。
午前10時スタート。
アトリエかまぼこは古いけれど落ち着いた空間で、定員20人のワークショップにはゆったりとしてちょうどいい感じ。
今回、ちょっとしたサプライズとして、扇田くんのサポートに「空のハモニカ」で金子みすずを主演した石村みかが駆けつけてくれたことがあって、うれしかった。
彼女も真剣に参加してくれ、ほかの参加者たちにもおおいに刺激になったのではないだろうか。
今回使ったのは、扇田くんも私もともに太宰治の「海」という短いテキストであることがあらかじめ決まっていた。
これを使って、まずふつうに輪読。
それから扇田くんがプランを示して、演劇的にこれをステージ表現に作りあげるにはどうしたらいいか、ふたつのグループに分かれてさっそく実践にはいっていった。
午前中はそれぞれのグループが自分たちがアイディアを出しあって、ステージプランを作る。
ランチ休憩をはさんで、午後はいよいよそのプランの実演作り。
演劇の経験者は少数で、「演じる」ということや演劇的な段取り作りの段階でかなり苦労している感じだった。
とはいえ、みんな楽しそう。
ひととおりそれぞれのグループが「海」を劇作品にしあげたところで、今度は私がそれを現代朗読のエチュードとして発展させながら、最終的にステージ表現にするプロセスを提供した。
演劇とはちがって、即興性のなかでひとりひとりの表現を全体融合させていく現代朗読の方法は、じつにシンプル。
ゼミ生が多かったこともあって、あっという間にステージパフォーマンスができあがってしまった。
ものの30分。
最終的にこの現代朗読の方法を、演劇プランと合体させることができるかどうか、いくつか試行錯誤してみたが、これは大変難しかった。
かんがえてみれば、いきなりこのような挑戦的な試みがうまくいくわけはないのだが、それでも可能性の片鱗と、なにより予期しないことが起こり、生まれつつあるという現場の感覚に、私はわくわくしっぱなしだった。
この試みは機会をつかまえてぜひ第2弾をやってみたいものだ。
扇田くんもきっとそう感じてくれているだろう。