朗読演出の必要性

朗読というと、小説や随筆といったテキストをひとりで読みこみ、表現を独自に作りあげて発表する、というイメージがあります。

もちろん、群読や朗読劇など、二人以上で作りあげる場合もありますが、この場合でも出演者=朗読者がみずからテキストを読みこんだり、表現を練りあげていくことが多いように思われます。

現代朗読協会では、一貫して、朗読者に対する指導を朗読演出家がおこなってきています。それは、朗読表現といえども、朗読者ひとりの独自の考えだけではなく、観客の立場からの客観的な目線や、朗読者自身も気づいていない魅力的個性を引きだす指導、そしてなにより専門的な方法によるテキスト解釈やコンテンポラリーな朗読表現のアドバイス、といったことが有効であるという考え方にもとづいています。

演出家による指導を受けた朗読者は、その年齢や技量、性格、身体性などを踏まえたもっとも効果的な朗読表現を見つけ、発表することができます。また、テキストの読みこみについても、演出家に助けられながら深く踏みこんだ解釈をしながら、オリジナリティあふれた朗読表現を作りあげることができます。

従来の伝統的な朗読表現は、とかく、「上手」「きれい」「文章世界を正確に伝える」といったことに重点が置かれ、朗読者の個性的な「表現」というものにはあまり注意が払われませんでした。しかし、音楽演奏家が「楽譜」を演奏することで「自分」を表現するように、朗読者も「テキスト」を朗読することで自分自身を表現することができる、というのが、現代朗読協会の基本的な考え方なのです。

そのためには、朗読演出の専門家がどうしても必要です。

現代朗読協会では、朗読者のみならず、朗読演出家の養成をおこなっていますが、朗読演出家をめざす方はもちろんのこと、演劇その他公演における演出においても役立つことと思います。また、自身が朗読家である方も、朗読演出の実際を学ぶことで朗読表現に役立つでしょう。

(現代朗読協会 代表 水城雄)

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